アドバイス集 Q12-開発部-

小学校の特活と中学校の特活はどこが違うのか?

学級会高等学校は、普通科、商業科、工業科など様々な学科があり、全日制、定時制(夜間・昼間)、通信制などの課程も多様で、生徒の個性を伸ばす場としての機能があるといえます。そうである以上、義務教育には、果たすべき役割として、子どもたちが自分の個性を見つける場ととらえることができるのではないでしょうか。だからこそ、高校のように課程・学科・コースによって異なる教育課程があるのではなく、全ての子どもたちに、同じ教科を同じ時間数指導する必要があるのだと考えます。そうした視点からいうと、小学校では自分の個性を探す、中学校では自分の個性に気付き、確信とまではいかなくとも、それに近づけていくという学びが求められるのではないでしょうか。

特活は、昭和22年に発表された「学習指導要領一般編」の中にある「自由研究」にその誕生があるといわれています。なぜなら、ここでは「個人の興味と能力に応じた教科の発展としての自由な学習」を中心としながら、「クラブ活動組織による活動」「当番の仕事や学級の委員としての仕事」が位置づけられていたからだと考えられます。

学級会その4年後、昭和26年に早くも改訂された学習指導要領において、小学校では「教科以外の活動」、中・高校では「特別教育活動」として位置づけられます。小学校の「教科以外の活動」の内容は、「児童会、委員会、児童集会、奉仕活動」や「学級会、委員会、クラブ活動」を一例として示し、中学校の「特別教育活動」は、「ホームルーム、生徒会、クラブ活動、生徒集会」が内容として示されてお音楽会に向けての準備 り、小学校より公民的資質の養成を全面に据えているところに違いがみられるものでした。小学校と中学校で、学習指導要領内の名称が異なっているのはこの時期だけで、昭和33年の改訂において、中学校には進路指導が内容に加えられたものの、小学校も中学校も「特別教育活動」として同じ名称となります。その後、昭和44年の改訂において学校行事が加わり、「特別活動」と名称を変え現在に至っています。ただし、時代の変遷や要望に応えるべく、その内容は改訂ごとに変容し、多岐にわたることになっていきます。「特活」とは何かについて、一言で言いきることが極めて難しいのは、この多様性に起因するといえるかもしれません。<参考資料 「学習指導要領における教科外の位置づけに関する一考察-機能的多様性を中心に-日本大学非常勤講師今泉朝雄」>

学級会「特活」の生い立ちから小学校と中学校の違いを見てみましたが、スタートの時点では、児童生徒の自治的活動に基づく教科外活動として一致点はあるものの、小学校には実践を通して体得させるという指導の意味合いが濃く、中学校にはより自治的自発的な公民的資質の養成に重きをおいているという違いがあるともいえます。そのなごりといえるかどうか確証はありませんが、小学校の「代表委員会・委員会」が週間課程に位置づけてあるのに対し、中学校の「生徒議会・委員会」は授業後の活動として行われていることをあげることができるのではないでしょうか。

子どもたちに「自分の個性を気付かせる」という視点に話を戻します。

学級会 小学校低学年と高学年では発達差が大変大きいため、ひとくくりにはいえませんが、例えば「係活動」の指導においては、まず、どんな仕事があり、どのように取り組むとよいのかを学ぶという場が必要となります。そうしたことを学んだ上ではじめて、学級のみんなに役立つ活動を、主体的に考えたり、決めたりすることができるようになるのだと思います。したがって、いろいろな役割を経験するということが大切であり、そのための指導を展開していかなくてはなりません。学級旗発表会 学級会の司会や記録の仕事を輪番制にして、学級のみんなが経験を積むというのも、大変有効な指導の一つだといえます。

学級会 それに対し中学校では、すでにそうしたことは学習済みであることを前提に、より自発的に主体的に活動に取り組むことができるよう、学級運営のシステムづくりをすることが担任に求められます。「1年間同じ係の仕事に取り組む」「学級会の司会を同じ生徒が行う」「掃除場所はいつも同じ場所」など、同じ仕事をやり続けることもよいでしょう。それにより、「この役割は自分に向いており、やりきることのできる仕事なんだ」と胸を張って言えるような生徒を育てたいものです。

小学校の教師も中学校の教師も、特活で育てたい児童生徒の究極的な目標に違いはありません。しかしながら、発達段階に応じてそのとき身につけなければならない事柄は明らかに違います。私たちは、その違いを見極め、どういう指導が今、子どもたちに必要なのかを踏まえることが大切なのだと思います。

輪番制による代表委員会(小学校)と持ち味を発揮する係活動(中学校)

学級会 平成3年度 森 雅明 研究員は、代表委員会のメンバーを輪番制にすることで、学級の全員が代表委員会の活動を経験させ、学校生活改善への意欲を全校的に高めていこうとする実践に取り組みました。また、同年の、橋本英生研究員は、生徒の持ち味を発揮できるような係活動に取り組ませることにより、自己の存在感を実感させることを目指しました。

学級会 まさに、前者は、代表委員を全員が体験することで、自分の個性を探そうという取り組みであり、後者は、自分の個性を持ち味という視点から実感としてとらえさせようという取り組みです。

研究当初、「リーダーやフォロワーとしての持ち合わせている資質を伸ばすのではなく、全員に同じ体験をさせることに意味があるのか」「自分の得意なことばかりをする係活動で本当の自分の持ち味を実感させることができるのか」と、互いの研究についてなかなか理解し合えず、様々に議論をしました。

学級会 しかし、国内留学の中で特活の歴史について話を聞く機会があり、小学校と中学校の特活は全く同じものととらえるべきではないことに気付きました。当たり前のことかもしれませんが、発達段階によって求めるものは違っているのは当然で、小学校で学んだ事柄をベースにして、中学校はそれをさらに伸ばす場ととらえるべきだったのです。このことに気がついてからは、お互いの目指すところについての共通理解ができ、それぞれ補完できないかと模索しあったことを覚えています。

研究員になるまでは、小学校と中学校の先生が一緒に勉強するという機会が数多くあるわけではなかったため、子どもは小学生から中学生へと育っていくんだという視点が足らなかったといえるかもしれません。目の前の子どもの育ちだけを考えるのではなく、徐々に学びを深めながら育っていくという、時間軸を踏まえた子どもの見方の大切さを痛感したときでした。

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Q13 特活指導者が中学校の進路指導を進めると、子どもたちはどう育つのか?

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