特活指導に教科書がないのはなぜか?
学級活動では、楽しい活動が求められます。しかし、楽しかったら何をやってもいいかというと、そうではありません。「望ましい集団活動を通して」学級生活向上を目指し、一人一人を生かしながら、協力して活動することが必要です。そのよりどころとなるのは指導要領です。忙しい先生が解説書をじっくり読んで指導にあたるのは難しいのが現状です。幸い、名古屋市では「名古屋市教育課程」が出されています。ここには、かなり親切・丁寧かつ具体的に指導方法が記述されています。題材例から選んで留意点に気を付けて指導すれば、指導要領に沿った活動ができるはずです。
しかし、それは学級活動が必ずうまくいくということを保証するものではありません。やはり、目の前の子どもの実態を見て、指導方法や活動内容を工夫する必要があるのです。「実態に応じる」という前提があるので、教科書のように「これさえ教えればある程度効果が上がる」ということではなく、目の前の子どもを見て、子どもと一緒に活動を作り上げていくことが特別活動なのです。
平成7年度名古屋市教育研究員 山田 裕氏は、「実態に応じる」とはどうい うことか、国内留学の体験を踏まえ、次のように語っています。
例えば学級活動の話し合いの司会グループについて、輪番制にして、全員が司会グループを担当し、話し合いの運営をするリーダー体験を積み重ねることは、研究会では「教科書」のように当然のこととしてとらえられているでしょう。しかし、それも「実態に応じる」ことが分かったのです。
東京で授業研究の事後検討会に参加する機会を得ました。助言者の校長先生がまとめの話をする時に、いきなり「司会グループの輪番制なんてやらなくていいのです」と始めました。私は慌てて止めようと腰を浮かせかけました。
「自分のように気の弱い子(これはジョークでした)が司会をやらされて、うまくいかなくて『どうする』と責められたら二度とやりたくなくなる経験となる。それより、口の達者な子が何人か司会をして他の子が『こうすればいいのか』と分かってきたときに、少しずつ司会のできる子を増やしていけばよい」。
自分の固定観念が見事に崩された瞬間でした。「こう指導しなければならない」「この活動は盛り上がる」「こう言えば子どもは乗ってくる」というのは、ある実態が伴ってのことです。教師の力量やキャラクターにもよります。名古屋市教育課程のような、ある程度のノウハウはあるものの、学級活動の指導はどうしても「実態に応じる」しかないのです。
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Q04 特活指導者が話合い活動を進めると、子どもたちはどう育つのか?
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