学級活動を中心にして、どのように年間を見通した学級づくりを目指すか。
1 学級活動を中心にした学級づくりの意義
教科指導を中心にした学級づくりの堪能な教師はいっぱいいます。美しい詩の音読が、常時、学習活動に位置付けられ、しっとりとした学級経営をする国語教師。毎日の生活の中に音楽があり、合唱や合奏を通して力を合わせて演奏することの喜びを味わわせる音楽教師など。それぞれすてきな学級づくりをしています。
しかし、学級活動を中心にした学級づくりは、それらの教科を中心とした学級づくりとは、何かが違います。違うはずです。
では、学級活動を中心とした学級づくりをすると、何が違ってくるのでしょうか。
学級活動は、子どもたち自身が自分たちの手で、学級をよりよいものにしていくことを目指します。子どもたちが主体的に学級づくりに参画していきます。子どもたちが自分たちの手で学級のルールを作っていくのです。それは、大人から押しつけられたり、与えられたりするルールではありません。だから、教師が力で押さえなくても、そのルールは崩れることはありません。学級が成長し、ルールが実態に合わなくなれば、子ども自身がよりよいものに変えていきます。それも、前向きに進化させていくのです。
そのためには、全てを子どもに任せて見守るというのではなく、教師の意図的な指導が必要となります。教師の適切な指導の下に、子どもは自分たちの力で、学級の問題を解決していきます。その過程を通して、子どもたちは力を付け、成長していくのです。
一人一人の子どもが成長すると、学級集団が成長します。学級集団の成長がまた、子ども一人一人を成長させます。
学級活動を中心とした学級づくりでは、一人一人の子どもと学級集団との両方を、子どもたち自身の力で、相乗効果で成長させていくのです。
2 学級づくりの見通しを立てるとは
学級づくりの見通しとは、学級集団の成長を見通すことです。そのためには、最終的にどんな学級集団にしたいのか、目指す学級集団の具体的な姿を明らかにする必要があります。しかし、いきなりそんな理想的な学級にはなりません。目指す学級集団になるまでの学級の成長を、段階的に、または構造的に捉えることが大切です。
例えば、認め合い・高め合う学級を目指すとします。よさを認め合うのは、学級づくりのベースです。毎日の生活の中で、年間を通して、よさを認め合う活動を行っていきます。しかし、「よさ見つけ」は、スタートにすぎません。互いに認め合う「よさ」の質を高めていかなければなりません。始まりは、「歌がうまい」「足が速い」「優しい」など、現時点のだれもが認める「よさ」であっても、活動が進むにつれて、すぐには気付くことのできない「よさ」、例えば、「人知れず、黙々と掃除をする姿」「さりげなく、落ち込んでいる子に声をかける姿」などにまで、目を向かせたいものです。
さらに、互いの「よさ」に終わらず、互いの「違い」を認め合えるようになるまで育てたいです。学級会の話し合いの中で「僕の考えは、君とは正反対だが、君の考え方もとてもよいと思う」と発言する姿を見ることができたなら、とてもすばらしいです。
3 学級集団を成長させる学級会の議題づくり
では、「認め合う」から「高め合う」へと一段とステップアップするにはどうしたらよいのでしょうか。
例えば、学級集団の成長段階を見通した学級会の議題づくりに取り組みます。「認め合う」時期は、まず、誰もが意見を言うことが出来る議題に取り組みます。例えば、「5の1仲良し集会のプログラムの内容を考えよう」ならば、色々なアイデアを出し合い、その中からいくつかを選ぶ話し合いをします。
そして、徐々に、条件を絞った中から、ねらいに合わせてアイデアを出し合う話し合いに取り組ませます。例えば、「誰もが楽しめるハンドベースボールのルールを考えよう」のような議題に取り組むのです。運動が苦手な子も楽しめるように、学級のみんなでルールを話し合うのです。
さらに、「高め合う」時期になったならば、あえて対立の生まれる話し合いに挑戦させます。「校外学習のグループの決め方を考えよう」の議題では、「好きな子同士でグループを作る」と「くじ引きでグループを作る」の案の対立が生まれることがよくあります。しかし、「認め合う」段階の学級会を経験した子どもたちは、学級の雰囲気を壊すことなく、対立を克服して、建設的な話し合いができるはずです。
修了式や卒業式を迎え、学級に別れを告げるとき、「この学級で、本当によかった」「この学級は、僕たちの誇りだ」と思えるような、すてきな一年を経験させたいものです。
次期学習指導要領の目指すものより
平成29年2月14日、学習指導要領の改訂案が出さましたが、これまで、文科省では、学習指導要領の改訂に向けて様々な審議が進められてきました。
次期学習指導要領は、2020年の東京オリンピックの年から実施され、2030年まで、日本の学校教育の指針となります。そのため、2030年の社会と更にその先の未来を見通し、そのために子どもたちに何が必要なのかを意図しています。文部科学省は、2030年とその先を「予測できない未来」とし、「よりよい社会と幸福な人生を自ら創り出していくこと」が重要としています。もはや、これまで言ってきたような「激動する世の中」でもなく「生き抜くこと」どころでもないのです。
平成28年8月1日に発表された「審議のまとめ」では、学習指導要領の改訂に向けて学校の意義を捉え直しています。そこでは、「社会への準備段階であると同時に学校そのものが、(中略)社会である」「自分の活動によって何かを変えたり、社会をよりよくしたりできることなどの実感をもつことができる」「子どもたちにとって、人間一人一人の活動が身近な社会生活に影響を与えるという認識をもつ」としています。
学級活動を中心にした学級づくりでは、話し合いや実践活動、係活動などを通して、まさに、子どもたち自身の手で、学級という社会をよりよくしていくことを実感させることが大切です。
予測できない未来を自ら切り拓いていく子どもたちを育てるために、学級活動を中心とした学級づくりは、ますます大切になっていくと考えます。
次ページへ
2章Q02 学級会で子どもの力を育てるために、事前に指導しておきたいことは何か。
目次へ
HTML版 目次ページ