アドバイス集 2章Q07-開発部-

建設的な話し合いを行うために、どんな指導を大切にするか。

1 互いを認め合う学級風土をつくり出すための、話し方指導

学級会で、「このようにすると、どうだろう」「ここもこう変えると、学級目標にもっと近づけるのではないか」というように、発言の内容が、学級をよりよいものにしようとして、どんどんと重なっていく。このような建設的な話し合いを子どもたちができるように、教師は指導を進めたいものです。

子どもたちが建設的な話し合いを行えるようにするには、互いを認め合う学級風土をつくり出せる指導をすることが大切です。ここでは、その一つの方法として、子どもたちが「アサーティブな話し方」を身に付けることができる指導を紹介します。

まず、「アサーティブな話し方」というのは、相手に反論するときにも、「あなたの主張する内容は、ある程度理解できるが、私はこう考える」というような伝え方のことです。このような話し方をすると、相手は自分の主張がある程度認められたと感じるので、「否定された」「言うだけ無駄だった」などという、悪い気にはなりません。

この話し方を重ねると、学級の子どもたちが、互いの話の内容を「ここは理解できる、ここは自分の考えと異なる」と認め合いながら聞くことができるようになります。これはまさに互いを認め合う学級風土をつくりだすことへ直結します。

では、どのように子どもたちに身に付けさせるとよいのでしょうか?それには、自分たちの思いを取り上げた導入や、素晴らしさが実感できる疑似体験などを取り入れた指導をすると効果的です。例えば、次のようなものです。

1) 友だちから言われて「いやだな」と思った言葉のアンケート結果を発表する。

「そんなの無理」「つまらん」「やっても無駄」などという言葉がアンケート結果の上位に入ってきます。その結果を見て、子どもたちは「みんなもいやな思いをしているのだ」と思うようになります。教師はそこで「なぜこのような言葉が「いやだな」と感じるのだろうと問いかけ、次の活動をします。

2) 「いやだな」と感じる反論と、そう思わない反論を聞き、違いを考える。

下のような意見のやり取りを子どもたちに提示します。

C: 学級集会では、みんなで歌を歌いたいです。理由は、みんなで一つの歌を歌うと、気持ちも一つになれる気がするからです。

A: 歌を歌うことに反対します。歌は苦手だし、つまらないからです。

B: 歌を歌うことに反対します。確かにみんなで歌を歌うと、気持ちも一つになりそうですが、歌の苦手な人もいると思います。気持ちを一つにするには歌以外にもあると思います。

AとBの反論を聞いて、「同じように反対しているAとBで、Cの受け取り方はどう違うか、その理由はなぜか」を子どもたちに考えさせます。教師は子どもたちに「BはCのいいところも言っているから、Aよりもいやな気持ちにならない」という点を気付かせたいものです。

3) いやな気持ちにさせない反論を実際にしてみる。

2) の活動の後で、「みんなで一緒に、海か山へ行くことになりました。相手がいやな気持ちにならないように反論しましょう」という疑似体験活動を行います。教師は相手のいいところも言いながら、自分の考えを伝えることができるように、児童の活動を支援します。このような話し合いになるのが理想です。

A: みんなで一緒に山へ行きたいです。理由はみんなで一緒に山に登り、いい景色を見ると、みんなとの仲がもっと良くなると思うからです。

B: 私は海に行きたいです。みんなと一緒に山のいい景色を見ると、仲が良くなると思いますが、海でみんなと一緒に泳いでも仲が良くなると思うからです。

このような疑似体験活動後に、反対された感想を振り返り、学級で共有できるようにします。子どもたちから「相手のいいところも言って反対意見を言えば、互いにいやな気持ちにならない」「これからは、相手のいいところも言ってから反対意見を言うようにしたい」という感想や意見が出るようにしたいものです。

2 振り返ったことを、普段の生活に生かすにはどうしたらいいのか?

この指導をした後は、子どもたちの発言内容ががらりと変わっていきます。学級会でも普通の授業でも反論するときには、相手の発言内容に理解できることを必ず述べてから、反論するようになります。特に、学級会では少数意見に対しても同じように反論し、少数意見を尊重する姿も育ってきます。もちろん、そのような発言ができた子どもたちには「うまく反論できたね、ありがとう」と、教師が必ず感謝の意を伝えます。

そして、反論された子どもたちにも「反論を聞いて、どんな気持ちがした?」と尋ね、互いにうまく話し合えたことを評価します。これは教師として、子どもたちの成長を支援する大切なポイントだと思います。

また、相手のいいところを述べてから発言するので「あなたの考えなら、こうしたほうがもっと良くなる」というような話し合いも行うことができるようになってきます。これは、建設的な話し合いができるようになるきっかけです。教師は、そのような話し合いができたときを逃さず、子どもたちに「話し合ってどんな気持ちだった?」「みんなの考えが、話し合いの前と後でどう変わった?」等と子どもたちに聞き、成長を互いに確認できるための指導をすることが大切です。

互いを認め合う学級風土がいじめ防止に

このような指導を続けると、友だち同士でトラブルになっても「君の気持ちも分かるけれど、自分はこのように、いやな思いをしたのだ」と主張し合うようになります。その結果、どちらかが一方的な攻撃をすることもなくなっていきます。これは、いじめ防止の大きな一助になるものと考えます。

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