実践活動後の指導で、なぜ振り返りを重視するのか。
1 なぜ振り返りが大切なのか?
振り返りの時間は、子どもたち自身が活動の成果を実感し、自分のよさ・互いのよさを認め合う時間となるため、学級活動にとってとても大切です。
事前の指導→話し合い活動→実践活動→振り返りのサイクルを繰り返す中で、子どもたちは認め合い、次の課題を見つけ、それが次なる活動につながっていきます。活動がうまくつながれば、子どもたちは大きく成長するのです。
2 どんなテーマで振り返るのか?
実践活動後の振り返りを行うときには、必ず子どもたちが事前に立てた課題(めあて・活動目標など)を基に話し合いを行います。事前-実践-事後(振り返り)と一貫して課題を意識させれば、次回の実践を行うときにも、子どもたちは自然と課題を意識するようになります。実践を繰り返す中で、課題を意識する習慣が定着すれば、共通の思いをもって学級をよくしようとすることができる学級集団になります。
3 振り返りで必ず行いたいことは何か?
振り返りは、学級全体で話し合っています。みんなで話し合えば、学級への所属意識は強くなり、次回の活動への期待感が高まります。また、友達から自分の頑張りが認められれば、子どもの自信にもつながります。もし、振り返りが、個人に振り返りカードを配って反省を書かせるだけのものであれば、個人の自己満足で終わってしまいます。互いのよさを認め合うこともできません。せっかくの実践を、今後の生活に生かすためにも、互いの頑張りやよさを認め合えるような話し合いを行いたいものです。
では、どのような内容で振り返るとよいのでしょうか。
振り返りでは、必ず子どもたちに成果(課題について達成できたこと、課題達成に向けて努力できたこと)の認め合いをさせます。ここで言う成果とは、以下のようなものです。課題達成に向けての個人(自分)の努力。普段はあまり発言しない友達が今回はたくさん発言した、などの友達の頑張りや成長。みんなで課題を意識して取り組んだんだという、学級集団の成果。どのような成果を中心に振り返るかは学級の実態によって異なりますが、こうした成果をみんなで出し合い、互いに認め合うことで、子どもたちの成果は大きな満足感になります。そして、「みんなで話し合って、みんなで活動したから、できたんだ。よかった」と子どもたちが実感できれば、その学級はさらに成長することでしょう。
子どもたちに認め合いをさせると、はじめは目立つ子ばかりが褒められがちです。そんな時は、教師の一言やカードの朱書きによって、子どもたちが気づきにくいよさを褒めてあげましょう。「○○さんは、本番では役割が少なかったけど、準備はとても頑張っていたよね」「(普段は発言が少ない児童に)今日は、頑張って自分の意見を言えたね」「(遊びのルールを破りがちな子に)今日はみんなで決めたルールを最後まで守れたね」など、教師が価値づけることで、子どもたちに目指すべき方向をよりはっきりと示すことができます。
4 よくなかったところの振り返りも必要か?
よくなかったことばかり反省させることは、子どもたちの意欲を低下させてしまいますが、振り返りの中で、よくなかったところや足りなかったところを話し合うことは必要です。よくなかったところが明確になれば、子どもたちが次回の活動に向けて、自分たちに何が必要かを考え、成長できるからです。ただ、教師が「よくなかったところを探そう」と言うと、文句のぶつけ合いになってしまいますので、「ここを変えると、もっとよくなるところはあるかな?」など、改善点を探させるような言葉掛けをするとよいでしょう。
よくなかったところの振り返りも、はじめに立てた課題と照らし合わせて話し合わせます。そうすることで子どもたちは、どうしてよくなかったかを分析し、次はどのようにしたいかを考えることができます。そして、自分たちの次の課題に見つけた子どもたちを教師が褒め、励ましていけば、よりよいクラスの姿をイメージし、それに向けて成長していくことができる子どもたちが育つでしょう。
5 振り返ったことを、普段の生活に生かすにはどうしたらいいのか?
振り返りの結果は、いつでも子どもたちが目で見て確認できるようにするとよいでしょう。たとえば、振り返りをファイルにする、表やグラフにして教室に掲示する、などの方法があります。とくに、分かりやすい掲示物を作れば、話し合いのたびに子どもたちが課題を意識できるので、自然と話し合いも深まります。
振り返りの話し合いに十分な時間が取れないときは、子ども同士で認め合いのメッセージカードを交換させ、そのカードに教師が朱書きをして、学級の掲示板に掲示しておく、という方法もあります。この方法でも、子ども同士の思いや教師の思いは、頑張った子どもの心へ、しっかりと届くはずです。
低学年の学級でも、振り返りってできるの?
小学校2年生を担任したときのことです。話し合いで学級目標を意識させたいと思ったわたしは、「キラキラ星」という掲示物を作りました。学級目標のキーワードが「たのしさ」「がんばり」「きょうりょく」だったのですが、星の形の3つの頂点を、学級目標に対応させたグラフにしたのです。振り返りでみんなが満点なら星は最大になり、点数が低ければ頂点までが短い星になります。この視覚化(可視化)されたグラフは、数値で表現するよりも2年生にとっては分かりやすかったようです。子どもたちは、毎月、キラキラ星の振り返りを行ううちに、自分たちの成果と次の課題をつかめるようになりました。そして、「次回のお楽しみ会は、『きょうりょく』のポイントがあがるようにしたいな」「かっこいい『キラキラ星』になるように頑張ろうよ」「先生、はやく『キラキラ星』の話し合いをしたい」などと言うようになり、みんなが3つの学級目標を意識して活動できるようになりました。
懇談会でも保護者から「すてきな掲示物ですね」「子どもが『いいキラキラ星にするんだ』って話してるんですよ」など、うれしい言葉を聞くこともできました。低学年の子どもでも、課題を分かりやすくとらえることができる工夫をすれば、しっかりと振り返りを行うことができるのです。子どもたちの学級生活の向上に結びつくすてきな振り返りを行いたいものです。
※ 星形であるにも関わらず、3つの目標で実践を行ったのは、多すぎる目標は、子どもたちが全てを意識できないからです。低学年では、三つでも、実は多すぎるかもしれません。
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2章Q06 学級活動を重視すると、教科の授業がどのように変わるのか。
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