アドバイス集 2章Q03-開発部-

話し合い活動を行うと、なぜ子どもが育つのか。

1 話し合い活動で育つ力

話し合い活動では、子どもたちの他者とよりよく関わろうとする力、自治的な能力や自主的な態度などが育ちます。しかし、議題に対して、子どもたち一人一人が自分の思いや考えを発表し、意見が出そろったところですぐに多数決を採り、集団決定をする学級会では、そのような力を育てることはできません。互いの思いや考えの違いに目を向け、比較しながら話し合ってよりよい解決策にまとめ上げていく過程が重要です。

互いの思いや考えをしっかりと受け止め、十分に吟味した上で集団決定に至った活動であれば、子どもたちは、みんなでやり遂げた充実感や達成感を味わうことができます。この充実感や達成感が、子どもたちの、新たな活動への意欲を高め、自分たちの力で問題を発見し、他者とよりよく関わりながら解決していこうという自主的な態度につながっていくのです。

そして、互いに意見を出し合い、話し合って集団決定し、みんなで決めた活動に取り組み、活動を振り返って成果を実感するといった経験を積み重ねることで、子どもたちの自治的な能力を育てることができると考えます。

2 話し合い活動で子どもを育てるために

話し合い活動で子どもを育てるためには、以下の点が大切だと考えます。

  1. 互いの思いや考えの違いを認め合うこと
  2. 自他にとってよりよい解決策をつくり出すこと

a. 互いの思いや考えの違いを認め合うことについて

話し合いの場では、互いの意見を聞くことで、議題に対するみんなの思いや考えを知ることができます。ここで、互いの意見を比較し、共感できる部分や相違点について、それぞれのよさをしっかりと考えて話し合うようにすることが大切です。そうすることで、「自分の思いや考えをみんなが受け止めてくれる」という安心感や、少数意見についても、よい点は生かしていこうとする支持的な風土が生まれ、学級が温かい雰囲気に包まれます。このような雰囲気の中で話し合うことで、子どもたちは、互いの思いや考えの違いを認め合うことのよさを実感し、互いの思いや考えを大切にしながら他者とよりよく関わっていこうとする力を身に付けていくことができるのです。

b. 自他にとってよりよい解決策をつくり出すことについて

話し合いを収束させるためには、自分だけでなく、学級のみんなの思いについても考えながら意見をまとめていかなければいけません。時には我慢したり、自分の考えと違うものを受け入れたりすることも必要となります。その上で、互いの思いや考えのよさや違いを生かして話し合い、折り合いを付けながら、自他にとってよりよい解決策をつくり出していくことが大切です。学級のみんなの思いや考えを大切にしながら、納得のいく解決策を集団決定することができれば、不安や不満を感じることもなく、生き生きと活動に取り組むことができます。そして、活動後には、みんなで決めた活動をやり遂げた充実感や達成感を共有することができます。

このような経験を積み重ねることで、新たな課題を見付けて、解決に向けて協力して活動に取り組もうとする自主的な態度や自治的な能力が育っていくと考えます。

3 話し合い活動で子どもが育つ場面

学級会では、生活上の諸問題やみんなで協力して取り組む活動など、様々な議題について話し合います。ここでは、学級のみんなで取り組むお楽しみ会「サッカー集会」についての話し合う具体的な例をもとに、子どもが育つ場面について考えていきます。

a. 葛藤の中で子どもは育つ

サッカーが得意で集会を楽しみにしている子ども、サッカーが苦手で取り組みに消極的な子どもなど、話し合いを通して子どもたちは、互いの思いや考えの違いに気付きます。得意な子どもは、大好きな活動を是が非でも実現させたいと、苦手な子どもがどんな理由で活動に否定的なのか、消極的なのかを探ろうと、必死に意見を聞こうとするでしょう。そして、「ボールに触れなくてつまらない。」という意見には「チーム全員がボールに触らないとシュートできない。」というようにルールを工夫したり、「ルールが分からない。」という意見には「集会に向けて、休み時間にサッカー教室を開こう。」と提案したりするなど、苦手な子も楽しむことができるように解決策を考えます。しかし、ここで「持てる力を発揮して、存分に活躍したい。」という自分の欲求と、「みんなのために」という気持ちの間で葛藤が生まれます。苦手な子どもも楽しめるように意見を出し合い、ルールを改善するうちに、得意な子どもが活躍できる場が制限されるようになってしまうからです。

子どもたちは、この葛藤の中で大いに悩みながらも、成長していくのではないでしょうか。例えば、自分の思いを抑え、みんなのために考えた意見によって、苦手な子どもが「それなら自分も楽しめる。」と態度を軟化させたり、不安そうだった表情が笑顔になったりと、少しずつ活動への意欲を高めていく場面があるとします。得意な子どもは「みんなの気持ちを考えてよかった。」と実感することができるでしょう。ここで、「自分のために」よりも「みんなのために」という意識が高まっていきます。そして、その気持ちが学級全体に広がり、苦手な子どもからも「得意な子どもが思う存分サッカーができるように、コートを分割してプレーする場所を分ける。」といった、得意な子どもの気持ちを考えた発言が聞かれるようになっていくのではないでしょうか。この過程で、子どもたちは、互いの気持ちを考えて話し合うことの大切さや、よりよく人と関わることのよさを実感することができるのです。

b. 「話し合ってよかった」という実感が伴うことで子どもは育つ

子どもたちが、葛藤しながらも、自他にとってよりよい解決策をつくり出すことで、一人ひとりの思いや考えを具現化した集会内容が決定されます。そして、みんなで決定した活動に協力して取り組み、最後までやり遂げることで自信が深まり、次の活動への意欲も高まっていくと考えます。

活動後には、互いのよさや頑張りについて振り返ります。そして、みんなで話し合ったことが、集会の成功につながったという喜びや充実感を味わい、「話し合ってよかった」と実感することができます。

このような経験を積み重ねることで、子どもたちは、みんなで決めた活動に協力して取り組むことのよさに気付きます。そして、自分たちで新たな課題を見付け、解決していくための意見をまとめ上げて活動内容を集団決定し、自分たちの力でやり遂げていこうとする自主的で自治的な態度を身に付けていくことができるのです。

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2章Q04 話し合いを深めるために大切にしたいことは何か。

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